第6章 Episode 5
「すごい集中力だよな。ご飯、温め直してやるよ」
「ありがとう三月、天使だね」
「なんだよそれ!ほら、座って待ってろよ」
三月の言葉に甘えて座って待っていると、一織が先程書き留めたノートから、私が書いた部分を持って来てくれた。
「ありがと、ごめんね。一杯使っちゃった」
「いえ、構いませんよ。少し見させてもらいましたが、さくらさんらしい歌詞ですね」
「今回の曲は君らIDOLiSH7からヒントを貰ってるよ」
「私たちから...?」
「衝突と和解を繰り返して成長していく様子。きっとみんな似たような経験してるだろうなって。私の歌はみんなの"共感"を大切にしたい」
「なるほど」
一織は微笑むと、ルーズリーフを置いて自室へ戻っていった。
そこへ、温め直してもらって湯気のたつご飯を持った三月が戻って来て、私の前に置くと向かいの席に座った。
「そういや言ったっけ?Re:valeがゼロの曲をカバーするんだぜ」
「え!?」
「ゼロアリーナのこけら落としでさ。オレらもびっくりしたけど、すげぇよな。今まで誰もしなかったことに、Re:valeは挑もうとしてるんだ」
温め直してくれた晩ご飯を食べていると、三月が思い出したかのように言う。
伝説のアイドル、ゼロ。突然姿を消してしまったが、未だに彼の信者は多く、彼の曲をカバーするアイドルは今までいなかった。
そんな曲を、Re:valeはカバーするというのだ。
「そっか...。すごいなぁ...」
「な!オレらも負けてらんねぇ!」
にっと笑う三月の笑顔は、とても明るいものだった。
「ありがとうな、さくら。なんか元気出てきたわ!」
「ううん。いつも元気をもらってるのは私の方だから。少しくらい役に立たせて」
私の方が少しだけ人生経験も長いんだし、と付け加えると「そう言えばそうだった」と忘れていたかのように呟いた。