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御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第11章 万華鏡


もうすぐ日が沈みきる公園。
夏が過ぎ、この時間はすっかり秋の香りがする風が吹いた。
毎年、部活も学校も賑やかになる季節が終わっていくようで、寂しくもある。
なるべく街灯の下、見やすいところに腰掛け、買ったものを渡した。
「高校卒業したら、本物を送るから。
それまでこれを付けていてくれないか?」
いや、きっとそうではない。
彼女はきっとそんなことは望んでいない。
ただひたすらに、その小さな手にある輝きを、いつまでも眺めていることすら幸せなのだ。
その意味をわかってはいたが、彼女が首を横に振るのが、なんだか悲しかった。
「これで、充分だから……」
「わかってる、それでも」
「じゃあ……私がちゃんと…」
「続きは、言わなくていい」
また彼女の口から、生きてたら、とか、いなくなってなかったら、とか、そういう単語を聞くのが怖かった。
「ごめんね…そうだね…。
じゃあ、また、指きり、してくれる……?」
「ああ」
いつものように、小指を絡ませる。
そして、隙をついて、口付ける。
驚いたように見上げた瞳には、反射したガラスの光が写っていた。
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