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御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第5章 論理上異性交遊


「牛島くん……送ってくれて、ありがとう…」
柔らかいか細い声が下から聞こえる。
「いや」
前よりも目を合わせられる。
それは、かなりの進展ではないのだろうか?
「…」
「……うん、なに?」
は、俺のことを拒否するでもなく、ただ恥ずかしそうに話を聞いてくれる。
「飯、食べて行ってもいいか?」
「……」
「何も、しない。食べたら帰る」
なんとなく、警戒されてのかと思い、そう答えた。
は静かに頷いて、部屋を開けてくれた。
綺麗な飾り包丁の入った野菜料理が並べられる。
特に話題もなく、静かな部屋で黙々と二人で食事をした。
この前のことを確かめるまでは帰られない。
己にそう言い聞かせ、漸く切り出す。
「は…」
「牛島くん……」
ほぼ同時に声が出た。
二人で箸を止める。
「……なに?」
「いや……は…?」
「……牛島くん……前に、私、自分のことを好きに、そうなってから、牛島くんにお返事する、って。
…そう言ったよね……?」
「あ、ああ、その話か 」
「…うん。
でね、たくさん、考えたの……」
「困らせたか?」
「そんなこと、ないよ」
は小さな口で水を飲むと、改めて俺を見る。
「私を好きになるより、牛島くんを好きになる方が、何百倍も、何千倍も、楽だなって…思った」
「…っ」
らしくもなく、顔が熱くなる。
「だから、牛島くんが好きな私でいようと、そう思ったの。
好きでいて、いい…?」
「当たり前だろ」
恥ずかしくも、声が震える。
もっと格好よく構えていたかったのに。
あまりにも嬉しく、頬が緩むのを抑えるのが精一杯だった。
「……牛島くんのお話は…?」
間を少し置いて、が聞いてくる。
不安そうに上目遣いで一瞬見てくると、顔を赤くしてうつむく。
「…いや、は、俺のことをどう思ってるのかと心配していた。
この前のも、俺の我が儘で無理させてしまった」
「…っ!」
思い出したのか、更に肌が赤くなる。
「…いやじゃないよ…」
「そうか」
安堵でため息をつく。
今まで試合でしか味わったことのない、嬉しさや幸福感や達成感。
それが、なんとなく気持ちよかった。
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