第5章 どうにでもなれ
郁翔side
耳を劈くような銃声が響き渡る。
その瞬間、俺は死んだと思った。
だが、目を開けると、視界ははっきりとしていた。
ただ、蓮様が血を流して倒れていた。
ピクリとも動かない。
俺を庇ったのか?
「蓮・・・様・・・」
「っ・・・いく・・・と・・・早く・・・逃げろ・・・」
そんな・・・何で俺なんか・・・
身分が全く違うのに・・・そんなに命懸けで俺を守るなんて・・・
「あーあ。愛してた坊っちゃんが死んじゃうな。まぁ、安心しろ。お前までは殺さない・・・戻ってきてくれればな・・・っうぐ!」
「・・・だから何度も言いましたよね。嫌ですって。」
俺の体は意志のまま動いて、腹部に蹴りを入れた。
「てめぇ・・・何しやがる・・・」
落ちた銃を拾い上げ頭に突き付ける。
「俺はどんな目に合っても構いません。でもこれ以上蓮様に関わらないでください。借金の返済も全て終わってるなら俺はもう用済みですよね。」
「・・・何が言いたい。」
「今すぐにここから消えろ。俺の前に現れるな。」
「その銃で脅してるつもりか?」
俺を下から睨む。
だが、何処か怯えている。
「人は殺したくない。けど、愛する人を傷つけられた今なら俺は殺すことが出来る。とっとと消えろ。」
「くっ・・・」
男はビビって逃げていった。
人間誰でも自分の命は惜しいもんだ。
結局は自分が可愛い。
なのにこの人は・・・こんな俺のために庇って・・・
どれだけ俺の事が好きなんだ・・・
それともただの馬鹿なのか。
けど、俺も人のことは言えないかもしれない。