第7章 death wish
飛空艇から降り立ったヴィンセントは、敵の妨害に遭い目標地点から逸れた場所に着いていた。
シェルクが携帯電話を通じてルート案内を行うが、ディープグラウンドへはミッドガル上層部からしか侵入ができないようになっているため本来は上空から最上部へ降りる予定だったものが周り道をする羽目になってしまった。
一方で、本隊と地上部隊は無事合流を果たし、各魔晄炉から零番魔晄炉へのエネルギーの供給を阻止するため破壊工作を進めていた。
ヴィンセントは同じく目標を逸れてしまったWRO隊員を導きつつ神羅ビルを目指すが、ディープグラウンド側もただ黙って通してくれるはずはなくツヴィエートを投入してきた。
「へぇ……本当に生きてたんだ」
ヴィンセントの胸からエンシェントマテリアを奪い穴を開けたロッソが、彼が生きていたことにさして興味のなさそうな感想を述べつつ立ちはだかる。
「アナタそれでも人間?」
「お前らよりはな」
「はぁ? 私らより? あは、あははははは! そりゃそうよ! 私らは、とっくに人間じゃないわ!」
歪んだ人間により生み出された強さだけを追求するもの。だからその通りに生き、この星からすべての命が無くなるまで強さを証明し続けると語りヴィンセントに刃を向けた。
彼女達は被害者だ。神羅の狂った人間達の玩具にされた。だがしかし、それを受け入れてしまっては駄目なのだ。
ヴィンセントは、朱のロッソの猛攻を退ける。
瀕死の状態となった彼女は、自分より強い者が地上にいたことに衝撃を受け、地上の者に倒される屈辱を味わうくらいならと自ら命を絶った。
シェルクのサポートを受けながら神羅ビルへと歩を進める。
現存しているディープグラウンドへの道は、以前プレジデントが使用していたものしか残っていないらしい。
神羅ビルへ足を踏み込もうとした時、ヴィンセントの身体に異変が起こり小さな呻き声を上げ蹲った。
「どうしました?」
電話越しに心配の声を送るシェルクの耳に、カオスの叫び声が届く。
「ヴィンセント!」