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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第6章 Cube


 本部の移設を済ませた飛空艇が飛び立ち、早速ヴィンセントはかつての戦友に会うためシエラ号の操舵室へ足を運んだ。

「おう、ヴィンセント! 久しぶりじゃねーか! っとと、ツモる話は後にしようぜ。作戦会議までまだ時間がある。ちいーとブラブラしててくれ」

舵取りに勤しむシドの邪魔をするわけにもいかず、ヴィンセントは言われた通りこの広く立派な飛空艇で自分の居場所でも探しておこうと通路へ出る。
当てもなく艇内を廻るが特に変わったことはない。かつての戦いの際にも暫く空で生活していたというのもあり、彼は慣れたように生活設備の場所を中心に見て回っていた。

 とある部屋で、シェルクに出会った。
傍には、ポッドに横たえられたシャルアの姿もあった。
静かな部屋にカタカタとキーの打刻音が鳴り続けている。シェルクは、コンピュータ端末を操作し、自身のツヴィエートとして備わったSND≪センシティブ・ネット・ダイブ≫という、意識を保ったままネットワークに潜り込む能力を使えるようにプログラムを改良しているのだと言う。
ヴィンセントは、淡々と話しながら物事に没頭するシェルクを見て、シャルアそっくりだと思った。
彼女も時々、相手を置き去りにして事細かく淡々と話す癖が出ていたから。
それを伝えると、シェルクはやや驚いた顔をしてコンピュータにかじり付いた。

 ヴィンセントは部屋を出た。
特段見ておく場所も無くなってきたので、当てもなく廊下を歩いていると、ふと懐かしい香りがしたように感じて振り返る。

「……嗅覚まで飢えているのか」

何もない通路が視界に入り、振り返った自分がどうかしているのだと思い直しつつ、懐かしい香りのした部屋のプレートを見る。
そこは隊員たちが利用する予定の休憩室だった。
特に疲れてもいなかったが、落ち着く香りに心を動かされ彼はその扉を開けた。
目の前に映ったのは、いくつかの無機質で固そうなベッドと、中央に眠る肌の白い女性だった。彼は目を見張る。

「シャロン……」

名を呟き少し早めの足取りで部屋の中央へ歩を進めた。
結晶でもポッドでもなく、普通のベッドに横たえられた体は、まるでただ眠っているだけのように見えた。
膝を折り、シャロンの頰にそっと触れる。彼女の反応はない。
逸る鼓動を抑えられず、自身の瞳孔が開いていくのを感じる。彼女にじかに触れたのは久々だった。
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