• テキストサイズ

FFVII いばらの涙 綺麗譚

第4章 Asrun dream


 泉に満ちた魔力故か、泉の底に沈められた結晶体の影響か、子供達の待つ泉の周辺は木々の明かりだけでは説明できない光に照らされていた。

カダージュ一味が戻ってくると、その泉は光を増し水面が揺れた。
しかしそれよりも大きな動きはなく、ただ水面が鼓動に合わせて波打つように波紋を広げるばかりだった。

ロッズがヤズーに見に行けと言うように顎で指図すると、ヤズーはそれを軽く無視してカダージュに問いかける。

「お前、あの像を何処へやった?」

カダージュからの返事は無い。
彼はただ目を見開いて水面を眺めていた。

「シャロン……」

小さく呟いた瞬間、水面に空気の泡が立つ。
カダージュは焦燥したように泉へ入ると、水中に手を伸ばし腕を引き上げた。
その腕の先には華奢な手が捕えられていて、ヤズーとロッズは瞬時にそれが女性像の中身であることを悟った。
水面から上がった髪は水と共に流れ落ち、衣服は肌に張り付いた。
それは彼女がもう結晶体では無いということを物語るように自然の法則に準じた動作をもち、どこか官能的で優美だった。

「おいカダージュ……シャロンってのは、そいつの名か?」
「君たちにも解ってるはずだよ。彼女はセフィロスの特別な人だ」
「……生きてるのか?」

カダージュは彼女の体を土の上に横たわらせ口元に耳を寄せた後、首を横に振った。

「死者を結晶化させて保存したのか……結構な趣味を持つ奴がいたものだな」
「だけど何故かこの子からは生気を感じるんだ。ねぇ、これが仮死状態だとしたら……僕たちのように、この子も何かが目覚めるための器なのかもしれないよ」
「何が目覚めるってんだ?」
「母さんだよ。きっと星痕に反応して結晶が溶け出したんだ」

2人は前のめりなカダージュの見解に戸惑い顔を見合わせた。
しかしもしそうなのだとしたら、リユニオンは可能なのか?
ロッズは首を捻って訝しげに口を開いた。

「落ち着けよカダージュ。こんなのが母さんな訳ないだろ」
「この子自身が母さんじゃなくても、母さんに触れればきっと目覚める」
「なぁ、お前はセフィロスの記憶を受け継いで彼女に執着しているだけだ」

その言葉にカダージュの瞳が泳ぐ。

「そうかもしれない……けど彼が……この子に何かを感じているなら、やっぱりきっとこの子には何かがあるんだと思う」

二人は呆れ森に姿を消した。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp