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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第3章 IN FLAMES


 ボーンビレッジとは、北の大陸の中でも白く朽ちた木々の茂る一帯の呼び名である。生気が失われた木々はまるで白骨のようであった。とはいえ水が全くないわけではない。むしろそこにはいくつもの泉があり、それらは深層で繋がり水の循環があるためか沼地と化すこともなく清浄な雰囲気を保っていた。化石がよく採れることから、かつては豊かな自然に恵まれた土地であったことが窺える。
そして現在、そのボーンビレッジにあるひとつの泉のほとりには新たなスポットが誕生していた。淡く光る奇妙な巨大樹だ。ヴィンセントは毎日そこを訪れるのが日課となっていた。
そこは2年前、セフィロスとの最終決戦の折にシャロンが眠りについた場所。彼女はその日無数の薔薇によって攫われてしまった。今度は人のエゴではなく”星”に。
しかしあれから枯れ果てたはずのこの地が呼吸を始め、草木が芽吹き、花が咲いた。変わることのなかった景色には時の流れが感じられるようになった。

花の女神

彼女が本来請け負うはずだった役割をきちんと果たしているようでどこか健気に思えた。

 ヴィンセントは、生命の強さに感心し、光の漏れ出す巨大樹の空間に入り腰を下ろした。
こうして耳を澄ましていると小さく歌が聞こえてくるような気がした。彼女の歌に違いないと彼は思っていた。暖かな歌声からは、脈々と流れる生命の息吹がそこにあるのだということを確信させた。彼女は生きている。

「……君が眠りについたあの時から、私の時は止まっている。……早く帰って来い」

結晶化した彼女からの返事はなく、彼の声は樹木の空間に消え入った。次に彼は彼女が咲かせた足元の花にそっと触れ、柄にも無い優しい声色で囁いた。

「なぁ、彼女を返してくれないか? 彼女は……私の大切な人なのだ……」

すると、樹の幹がパキと音を立てた。
そしてすぐさま微かな地響きを感じる。ヴィンセントはその異常に対応するべく神経を研ぎ澄ませた。
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