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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第1章 white eyes


 星の海。ライフストリームの源流には、生命の循環で得た膨大な知識が集まる。
尽きた生命、新たに生まれる生命の通り道。巡る生命の海を漂うなど本来は不可能なことだ。
しかし彼はその海の中を、意識を失わないままに留まっていた。

最後の戦いを終え、ジェノバ戦役は過去のものとなる。
クラウドとの一騎打ちを経て消滅したはずの彼の姿は、まだそこにあった。
消滅せずその場所に留まる彼の身体に華奢な手が添えられる。

「……消えることが怖いの?」
「シャロン……いたのか……」

シャロン。彼女もまた、肉体と意識が切り離され、思念だけで星の海を漂っていた。
実体の無い思念は、ただふわふわと海の流れに身を任せながら寂しく微笑った。

「帰り方がわからないの」
「迷っているのか? 帰るべき場所がどこなのか」
「ちがう……。ただ、道がわからないだけよ……」
「強がるなよ」
「セフィロスは?」

眠っていた彼は、目を開き挑発的に口角を上げた。

「俺には帰る場所などないさ。だからこの星を箱舟にして、新たな楽園を作る」
「この星を《犠牲》にして……でしょう」
「フ、意地が悪いんだな。帰る場所がないなら、お前も共に連れて行ってやろうか」
「結構よ。誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなんて、いい心地がしないわ」

セフィロスが不敵に笑み、体を起こそうとすると、シャロンが彼の胸元に頰を付けた。彼女の思念に実体はなく、セフィロスの体を押さえつける強制力はないが、彼は笑みを絶やさぬまま彼女を見下ろし動きを止めた。

「シャロン……何のつもりだ?」
「ねぇ、帰る場所がないって、本当に思っているの?」
「俺の居場所はいつも戦場にあった。帰る場所などどこにもないさ」
「そんなことないわ。あなたを待つ人のいる場所が帰る場所」
「綺麗事を」

セフィロスはシャロンを一瞥し、自嘲気味に笑う。
シャロンが手を伸ばすと、セフィロスの身体をすり抜けた。

「あなたを殺そうとした私が、言えることではないかもしれないけど……私だって本当はあなたに消えてほしくない」
「俺は消えたりしない」
「そんなことが出来る?」
「俺は特別だからな」
「それ、久しぶりに聞いたわ……」

シャロンは6年前の記憶を懐かしんだ。彼がまだ正気を保っていた頃だ。
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