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それでも…世界を愛そう『文豪ストレイドッグス』

第1章 初々しい君。


「おや…貴女とても綺麗な顔をしているね。名は?」
「……お、尾崎…紅葉…で、ありんす」
「尾崎、紅葉か…ふむ、実にいい名だね。君の美しい赤髪によく映える。そうだ、お嬢さん…もし宜しけばだが、私と一緒に来るかい?」

まだうら若き乙女の少女は、凛とした美しさと妖艶な色気にドキドキと目を見張った。こんなにも闇の裏世界で、眩しい程の優しく穏やかな笑顔で手を差し伸べてくれたのは生まれて初めてだったからだ。甘美な程の罠だろう、その底知れない深く黒い瞳に吸い込まれそうで少女は声が震える。

「私(わ、わっち)は…名を教えんした、だから…そなたの、名をーー…」
「白雪菊乃だよ、宜しくね…紅葉」

ただ名を呼ばれただけなのに痺れるくらいの高揚感に胸をぐっと手に当て握り締める。愛らしい少女…尾崎紅葉は彼女、菊乃に一目惚れで憧れの存在になった瞬間であった。

「菊乃姐さん!」
「はいよ、どうしたんだい紅葉?」
「私は認めん!菊乃姐さん直属の部下であり、愛弟子はこの私じゃ!誰にも譲らぬ!」
「あー。首領に聞いたのか…先ずは幹部、おめでとう。と云って置こうかな?」
「!!…私は、まだまだでありんす。菊乃姐さんの足元にも及ばんし…それに、私は…菊乃姐さんの傍にいとうござんす」

紅葉は菊乃に『おめでとう』と褒められた言葉にぱぁー!と花が咲いたように綻ぶが、直ぐに謙遜ししゅん…と寂しそうに顔を俯かせた。菊乃はこれは困ったと苦笑いを浮かべれば、思い付いたように微笑みかける。

「お嬢さん、幹部の昇進祝いだ…何か欲しいモノはあるかな?今ならなんだって買ってあげられるよ?髪飾り?首飾り?着物?それとも直接的にダイヤのような宝石類かな?」
「……私は、菊乃姐さん以外いりんせん…」
「はは、嬉しい事を言ってくれるねぇ…私が男なら君の色気に惚れていたよ?」

菊乃は少しお茶目な顔をして照れるように頬をかいた。紅葉は分かっているのだ、どれだけ菊乃に近付こうとも触れる事すら許されない。それ程尊き存在で、愛おしい人だと云う事を。ならばせめて…そう真っ直ぐ菊乃を見つめる。

「菊乃姐さんの髪留めを…」
「は?髪留め?こんなのでいいのかい?」
「それがようござんす!」
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