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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



 ちょっと状況を整理しましょうか。

 私ことハルカは、『外』からヘルサレムズ・ロットに来た観光客である。

 けどなぜか『記憶障害』を患った上、周囲数メートルを春の気候に変える『常春(とこはる)病』という呪いにかかってしまった。

 呪いとしては軽微も軽微な部類らしい。それでも外の世界に出たら混乱を引き起こしかねんということで、ヘルサレムズ・ロットを出るのに『待った』がかかった。

 かといってこんな治外法権都市でろくな福祉機能があるわけもない。
 私は色んな場所をタライ回しにされ、ついにホームレスになってしまった。

 だけど、そもそも自分が何でこんな危険な街に観光に来たのか。
 一人で来れるわけがないから、同行者だっているはずだ。その人たちは私を探さないのか。
 分からない。記憶喪失のせいで、覚えてないのだ。

 そして私は困窮の果てに行き倒れかけた。

 そこをスティーブン・A・スターフェイズさんに拾われた。

 ……拾われたというか拉致されたというか。

 ほとんど事故である。

 あちらは五徹と三度の戦闘後で、テンションがおかしくなってた。
 で、こともあろうに私に一目惚れをし、そのまま『お持ち帰り』したのだ。

 うん。当の私がポカーンだった。
 でも事実らしい。

 しかし青天の霹靂(へきれき)だったのはスティーブンさんも同じ。

 突然降って湧いた恋心に、スティーブンさんは内心、激しく動揺した。
 彼は個人的な動機から、大切な物を作らず生きていくと決めていたのだそうだ。

 でも恋心を消せず、思い詰めた挙げ句、私を殺しかけた。

 ……ホンっトに思い詰めすぎだ。
『冗談じゃねえ!』と思った私は、ショック療法的なコトを提案した。
 思い切っておつきあいしてみれば熱から冷めるのでは?
 スティーブンさんもそれが最善策だと認めた。

 それで、ここしばらく恋人ごっこ的なことに終始していたのだ。
 
 でもさっき突然、スティーブンさんは言った。

『病院で呪いを解いてもらおう』

 私を外の世界に帰すことに決めたらしい。

 かくして私たちは離ればなれになり、それぞれの生活に戻ったのでした。

 めでたしめでたし。


 ――Happy End♡


「いいのか、こんなオチで!」
 
 スティーブンさんが去ってから、枕を壁にぶん投げた。

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