第20章 明かされた事実
私よりも驚いて言葉が出ない愛聖さんを見ながら、姉鷺さんが拠れてしまったリップを指先で拭い、小さく息を吐いた。
姉「そこの小鳥遊さんのお嬢さん?」
「は、ははははいっ!」
唖然とする私を呼ぶ声に驚き、慌てた返事をしてしまうと、姉鷺さんはいつもの感じに戻って穏やかな瞳で笑う。
姉「やぁね、そんな鬼でも見たかのような・・・ま、いいわ。愛聖を早く着替えさせなさい。風邪でもひかれたら厄介よ。あぁ、そうそう。そんなに心配しなくていいわよ?ちょーっと口塞いだだけだから、オトナのキスまでしてないわ。アタシはもう戻るから後はよろしくね?」
「あ、あの?!」
愛聖さんを運んで下さったお礼を言おうと声を掛けたけど。
姉「なぁに?アンタもキスして欲しい?」
「えっ?!い、いいい、いえ大丈夫です!」
予想外な返答に声が上擦ったまま数歩下がる。
姉「あら、残念ね。ま、そんな事してそっちの社長に怒鳴り込まれたら大変だし、やめとくわ?じゃ、早く愛聖を着替えさせるのよ?じゃあね?」
うふっ、とハートマークを飛ばすようにウインクをして姉鷺さんが部屋から立ち去ってしまう。
「お、オトナのキス、って・・・いったい・・・」
あの一瞬、姉鷺さんは普段とはガラリと違う雰囲気で、オトナの顔だった。
まるでそれは、いえ、あまり深く考えるのはやめよう。
フルフルと頭を振って邪な想像をかき消してへたり込む愛聖さんに駆け寄った。
「あの、着替え・・・ましょうか」
やっとの思いでそんな言葉を発し、手を差し伸べる。
『紡さん、次の番組・・・お昼の時間でしたよね』
呆然とする愛聖さんからの質問に、はい、とだけ返す。
『ちょっと、シャワー浴びて気持ちを整える時間を下さい。番組にはちゃんと出ます。だから、時間下さい』
「分かりました。その間は誰が訪ねて来られてもここへは一切入らないように手配します。私もここにいますから、大丈夫です」
そう告げるとゆるゆると立ち上がり、楽屋の奥にある簡易シャワー室へと歩いていく。
そういえば、この楽屋にはシャワー室があるのにどうして御手洗だけは管理されていないのだろう。
他の楽屋ならあるのだろうか?
そんな事を考えながら、やがて聞こえてくるシャワーの音に慌てて楽屋の鍵を閉めた。