第19章 魔法のコトバ
『納税してるし、仕事もしてます!って、あれ
これっていつも三月さんが二階堂さんとかに言ってるセリフだ』
普段の三月さんを思い浮かべ、思わず笑う。
『これはちゃんと寮に戻ってから読むから、歩きスマホの心配はしないでいいから』
万「はいはーい、是非そうして下さい?」
尚もまだからかい口調の万理にぷぅっと頬を膨らませながら、それじゃとりあえずこのまま寮に戻るね?と行って万理と別れ事務所を後にした。
寮に戻る道を歩きながら、そうか、あのドラマのオーディション通ったんだと、ひとり口元が緩みそうになるのを堪える。
ちょっと変わったシナリオ作家さんではあるけれど、あの人が書き上げる作品はどれも素敵な作品なのは知っている。
その作品に自分も参加できると思うと、やはり情報を教えてくれた岡崎さんには感謝しかない。
・・・岡崎さん、か。
作品を読み始める前に謝罪の電話をしなければ。
そう言えば岡崎さんがこの情報を教えてくれた時も、何かと私やらかしちゃってるよなぁ。
ホント、岡崎さんには私が原因の二次災害ばかり起こしてしまって申し訳ない。
これが千とかなら・・・いやいや、むしろ千だったらもっと厄介だ。
それこそ楽しそうに酔っ払いの私の電話を一晩中でも繋いだままにしてそうだし。
更には、なにが楽しいのかそれを録音して何度も聞いてたりしそう。
前に千のイタズラでそんな事があったし。
あの時は確か共演した台本を千の家で読み合わせしてて、私にはあなたしかいないというセリフを録音されてたんだっけ。
それを再生しては、これは僕を愛してるって事でいいんだよね?とか確認される始末。
思い出すだけでとんでもないイタズラをしてくれたとため息が零れる。
そう考えると千じゃなくて良かったのかも知れないと、変に納得してしまう。
ま、そんな事より今はやるべき事がたくさんあるから早く寮に帰ろう。
よし!とポケットに押し込んだスマホを叩き、軽く空を見上げて大きく深呼吸をして寮までの道をまた歩き出した。