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*スーツを着た狼*【R18】

第3章 先輩の意外な一面





「し、失礼します…」

梨乃と別れ、野宮先輩に呼び出されたミーティングルームへ向かう。
控えめにノックをしてから中へ入ると、先輩は長い脚を組んで資料らしきものに目を通していた。


「こっち…座って」

「は、はい…」

隣に座るよう促され、パイプ椅子に腰掛ける。
今の私は、他の女子社員とは違う意味で緊張していた。
でもこれは仕事だし、いつまでも彼を恐がっている訳にもいかない。


「あの…昨日は部長からそこまで詳しい話を聞けませんでしたが、今回はどんな商品を開発するんですか?」

「ああ…今回のテーマはレトルト食品だ。それ以外は全部俺たちに任せるらしい」

「……え?」

「下手に先入観を植え付けたら、俺たちの視野が狭くなるだろうって言われた」

「……、」

それは確かにそうだけど…あまりにもざっくりしている。

(でも大役を任されたからにはしっかりやらなくちゃ…)


それから2時間程、私と先輩は互いに意見を出し合った。
やはり私よりキャリアがある分、彼の意見は面白くて良い刺激になる。
相変わらず口数自体は少なかったが、そのひと言ひと言には重みがあるような気がした。



「…もう昼か。一旦休憩だな」

「お疲れ様でした」

お昼の12時を回ったところで一度彼と別れる。
自分のデスクへ戻ると、私のパソコンには可愛らしい付箋が貼ってあった。

『会議が長引きそうだから、今日は先にお昼行っちゃって!』

それは梨乃からの伝言で。
普段彼女とランチを摂る事が多い私だが、どうやら今日はそうもいかないらしい。

(仕方ない…1人で食べてこよっと)

社員食堂へ行く事も考えたが、今日はあまり食欲が無い。
野宮先輩と仕事をする事が決まり、昨夜は緊張してあまり眠れなかったからだ。

結局私はコンビニで適当な物を買い、会社の屋上で1人昼食を摂る事にした。



(うーん、イイ天気)

今日は暖かく、心地よい風が吹いている。
私はコンビニ袋を提げたまま、屋上にあるベンチ目指して歩を進めた。
そして…


「…!」

ピシリと固まる。
なぜならそこに先客がいたから…


「の…野宮先輩……」

「…?お前もここで昼飯?」

「……、」

本当は今すぐ回れ右をしたかったが、いくら何でもそんな失礼な事は出来ない。
私は笑顔を引き攣らせながら「お疲れ様です…」と言った。



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