第3章 歌声
太陽の光が部屋の中へ侵入してくる。
すっかり日の出と共に目覚める癖がついているので、早起きは苦ではなかった。
身支度をして食堂へ向かうと、おばちゃんから何かを手渡された。
「おばちゃん、これは?」
「昨日ね、あったはずだなーと思って探したのよ。そしたらあったの、エプロン。良かったら使ってね。」
もらったエプロンを広げてみる。
たくさんのフリフリがついた白いエプロン。おばちゃんのお古なんだろうか、それでも気持ちはすごく嬉しかった。
「ありがとう、おばちゃん!大切に使わせてもらいますね。」
おばちゃんと二人で朝食の準備をする。すると、廊下を走ってくる足音が聞こえる。
もう誰か来たのだろうか、まだ時間は早い。
「おおーー!!いたーー!!」
駆け込んできた人物に指を差され、びくっと肩を震わせる。六年生で一番元気な彼だった。
「おい、いたぞ!!文次郎!!」
「小平太!そんなに騒ぐな!驚いているじゃないか。」
続いて入ってきた人物も、昨夜見た顔だった。
「私は七松小平太だ。こっちの渋い顔は潮江文次郎。なぁ、名前何て言うんだ?」
「渋いって言うな!!」
小平太は文次郎の言葉など、まるでお構い無しの様子。椿は二人のやり取りに笑みがこぼれる。
「私は竹森椿。よろしくね。」
「椿か!なぁ、今日後で時間あるか?迎えにくるからな!」
椿の答えを待たずして、小平太は文次郎と続々現れた六年生に引っ張られて行った。
「小平太、椿さんに何するつもり?」
「秘密だ!だがとてもいいことだ!」
「モソ…小平太のいいことは大抵良くない。」
「ああ、そうだな。」
小平太が振り返り椿と目が合うと、二人は笑顔で手を振りあった。
「…なんか気に食わん。」