第10章 過ぎ去りし時の回廊
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『…お可哀想に椿様。産まれてすぐに隆影様に見限られてしまって…』
『隆光様がお産まれになって、益々椿様への風当たりが悪くなりましたよね。』
『殿はお世継ぎを所望しておられましたけれど、あんなに突き放さなくても…』
『そうですよ、ご自分のお子ですのに…』
『いつまで続くのでしょう。いっそのこと、早く嫁がれた方が椿様にとって幸せかもしれませんね。』
『しっ!聞こえるわよ。』
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『椿様、こちらにいらっしゃったのですか。』
『神室。』
『おや、どうされました?』
『神室は、私とずっと一緒にいてくれる?』
『勿論でございます。私はいつまでも椿様のお側におりますよ。』
『椿』
『母上!』
『こちらで遊んでいたのですか?』
『はい!このお花を母上に。』
『まぁ、ありがとう。とても綺麗ね。』
『えへへ、母上大好きです。』
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『葵様』
『まぁ隆光様、いかがいたしましたか?』
『姉上のご様子はいかがでしょうか?気になってしまって…』
『大丈夫ですよ。熱も時期に下がるとのことです。』
『そうですか、良かった。熱が下がったらまた私と遊んでくださいと、姉上にお伝えください。』
『わかりました。隆光様、いつも椿を気にかけてくださり、ありがとうございます。隆光様は優しい男の子でございますね。』
『姉上は…私にとって唯一の姉上ですから。父上に何と言われようと…』
『…はい。』
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