第5章 嫉妬
そうして、立海との練習試合は始まった。
竜崎先生は、やはり立海の3強である柳、真田、幸村の3人の攻略の糸口を見つけようとしているらしい。
乾もデータを取ろうと必死で、あまり試合には出ないと言っていた。
そして、相手もこちらのデータを取ろうとしているのだろう、柳がかなり目を光らせてこちらを観察している。特に越前との試合。越前は今、真田と試合をしている。100%の力は見せるな、と言ってはあるが、負けん気の強い越前のことだ。本気で勝ちに行くことだろう。
そして、ボクはというと...
「やあ、不二。君は優衣さんに気があるの?」
「幸村...君には関係ないよね?」
「ふふ、いや、気になってね」
幸村との試合だ。
正直、今幸村とは当たりたくなかった。
彼に対して、見苦しい、嫉妬の気持ちを燃やしているボクは、彼の所謂「イップス」にかかりやすい状態だと思う。
それを、彼女に見られるというのはなかなかに精神に来る。
「...気がある、と言ったら何かあるの?」
「いや?俺も気になっているんだ、彼女。あの何もかも見透かされそうな目、気に食わないし、それと同時に占有したくなる」
「...要するに、君も彼女が気になっているってことかな」
「うーん、まあ、彼女のことそんなに知らないし、今の所の素直な感想なだけだよ」
「...彼女は、あげないよ」
「ふふ、君のものなのかい?」
痛い所をついてくる。
ボクは彼女の気持ちを何も知らない。
ボクの事をどう思っているのか。
ボクの気持ちはどう伝わっているのか。
...好きな人は、いるのか。
ボクは恋に臆病で、彼女に何も聞けない。
なのに一人前に、嫉妬はできるみたいで。
「試合始めまーす!」
「あ、はい。じゃあ、今日はよろしくね、不二」
「今はあまり君とよろしくしたくないなぁ...」
こうして、ボクらの試合は始まった。