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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 …………

「おい。おい松奈」

 頬をピタピタ叩かれ、目を開ける。
「あ、あれ?」
 周囲が薄暗い。気がつけば夕暮れだ。
 そして一松さんがいる。私の頭を膝にのせ、頬を叩いていた。
「何してんの、こんなとこで寝て。風邪引きたいの? 犯罪被害にあいたいの?」
 どっちも嫌っす。
「立ちなよ」
 と、手を引っ張って私を起こしてくれた。
「ど、どうも」

「家に帰ったら、風呂に入った方がいいよ。こんなとこで寝るとか、何考えてるの」
「はい、すみません……」
 確かに背中が痛い。
 けど一松さんの言うとおり、何でこんな場所で寝たんだろう。
 私は何かを見て気絶をしたような。

「そうだ、一松さん!! 確かあなた、さっき――!!」

 言葉を止める。振り向いた一松さんの目が、金色に光っていた。

「何?」

 ニタリ。

「何でもないっす」
 ガタガタガタガタと震える。ゆ、夕日の見せた一瞬の幻だ、今見た物は!!
「っ!」
 頬に触れられたかと思うと、一松さんにキスをされた。
 言葉を失う私に、一松さんは皮肉げな顔で笑い、

「それが賢明だと思うよ」

 何がっ!!
 けど一松さんに抱きしめられ、もう一度キスをされた私であった。

 恋人らしいかどうなのか。そんな謎な休日でした。

 
オマケ:『制裁』


「ただいま帰りましたー」

 と、玄関の引き戸を開ける。
 靴を脱いで上がろうとしたら、ドタドタと走る音がした。
 見ると、廊下の向こうからトド松さんが笑顔で走ってきた。
「あ、トド松お兄さん、昼間はごめ――」
「松奈っ!! 今日はすっごく楽しかったね。また行こうよ!!」
 と、私に片目をつぶる。
「は? 何の話ですか?」
 そこでトド松さんは、私の背後にいる一松さんを見、いかにも今気づいたように、
「い、一松兄さん!?」
 そして私にヒソヒソ声(と見せかけた大声)で、

「大丈夫だよ、一松兄さんには話さないから!
『あのこと』は二人だけの秘密にしておこうね!」

 と、ドタドタと走り去っていった。

「ちょっとっ!?」
 意味が分からず叫ぶが。
 
「……話、詳しく聞かせてもらえるかな」

 肩にポンと手を置かれる。背後の紫の悪魔に。
 すでに黒いオーラをこれでもかというほど、立ち上らせていた。

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