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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第4章 後日談



 だが部屋を借りるにあたっては、敷金礼金という謎の慣習がある。
 要は家賃の何ヶ月分かを、前もって払わなければいけない。
 もちろん引っ越し代、新居の家具代もろもろの費用もある。
 むろん、ニート二人でそんな貯蓄があるわけもない。

「松奈?」
 後ろから一松さんの声。
「一松さん!」
 私は情報誌を広げまくり、
「やはり敷金礼金ゼロ保証人不要という物件はありませんですね」
「……うん。普通は無いと思う」
 一松さんはうなずいて、私の隣に座る。

「ん? どうしました?」
 何だか困っているようだ。
「松奈。膝枕させて」
「はいはい」
 膝をちゃぶ台の外にずらすと、一松さんが私の膝に頭を乗っける。
「よしよしよし」
「くすぐったい」
「こら。胸を触ろうとしない」
 伸びてくる手をペチッと叩き、二人で笑い合う。
 そのうちに一松さんが顔を上げてきて、キスをする。

「一松さん。私も膝枕して!」
 一松さんのお膝に頭を乗っけようとする。
「ダメ。俺が松奈に膝枕してほしい」
「態勢を変えれば、互いが互いの膝枕することも可能!」
「それ膝枕じゃなくて、単に相手の膝に頭をのせてるだけ!」
 二人でふざけてゴロゴロ転がって、ぎゅむっと抱き合ってキスをする。

「……何か、したい気分」
 私の背を意味ありげになぞりつつ、一松さんが言う。
「家の中はさすがにダメですよ」
 お母様は全力でOKしそうな気もするが。
 かといって、今から理由も無く二人で出かけるのも、あからさますぎて。

「やはり色々と問題ありですね、この家は」
「……もう少し、待ってて」

 私を抱きしめ、唇や髪の毛にキスしてくる一松さん。
 くすぐったい。何だかムズムズする。

「今夜は私の部屋で寝ますか?」
 ドキドキしながら言ってみる。
 一松さんも少し顔を赤くしながら目をそらし、

「う、うん……そ、そう――」

「おい二人とも!! そろそろ寝るぞっ!!」

 バーンとふすまを開け、皆さんが私たちを迎えに来た。
 嗚呼、プライバシー皆無な木造家屋。

 養って欲しいのかリア充を妨害したいのか。男兄弟は複雑である。

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