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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 クローゼットには他にも色々ある。
 生活必需品があれこれ。なぜか応急処置関係が充実。
 ミネラルウォーターと非常食が、箱単位で置いてあるのはありがたい。

 ……ぐー。

 お腹が減る。そしてすごく喉が渇いている。
 ペットボトルを一本、開けようとした。
「ぐ……」
 手錠のせいでボトルを押さえる作業が……あんまり伸ばすとすり傷こすって痛いし!
「……うう……」

 歯でどうにか開けようとしたけど、結局あきらめた。
 
 そして疲れてベッドに座る。
 
 雨がガンガンと窓を叩く。そうだ、外はどうなってるんだろう。

 頭でカーテンを押し、外を見ようとする。
 うわ、外から板が打ち付けられてる。
 板の間から入るわずかな光が光源だったのだ。

「どうりで暗いワケですか。うーむ」

 板の間に必死に目をこらすが、緑が見えるだけ。
 窓の鍵までは、さすがにガードされてないけど格子+手錠だと難易度が高い。
「おーい!! 誰かいませんかー!! 変質者に閉じ込められてまーす!!」
 窓を開けず、何度か大声で叫んでみたけど、もちろん反応は無い。
 困ったなあ。
 手錠をしたままウロウロしていると、

「……っ!!」

 心臓がドクンと跳ね上がる。

 靴音。誰かが部屋の外を歩いている。

 私は壁際に身体を押しつけるように下がり、身を縮めた。

 だが私の願いも虚しく、足音は部屋の前で止まる。
 鍵をガチャッと開ける音。
 そして。

「一松さんっ!!」

 ホッとする。入ってきたのは、お盆を持った一松さんだ。
 つなぎにシューズ姿。いつもの猫背でダルそう。
 私は小走りに近づいた。
「良かったあ。変質者だったらどうしようかと思ってました!」
 一松さんはお盆を下に置き、内鍵をかけた。

「それは良かったね。朝ご飯にする?」
「しますします、お腹が空いてたんですよ!」
 一松さんはお盆をテーブルに置き直し、椅子を引いて座る。
 私も手錠のまま椅子を引き、隣に座った。
 朝食は何だろう。あ、両手を動かしにくくても食べやすいパンだ。
 あとは野菜サラダとカフェオレ。
 喉が渇いていたので、真っ先にカフェオレのカップを手に取る。

「いただきまーす……うわっち!」
「熱いから、急ぐと火傷するよ」
「先に言って下さいよ!」

 ともあれ喉の渇きが癒えたので、次に急いでパンを食べた。
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