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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


「じじじじ冗談でい! ツ、ツケの支払いは次でいいからなー!!」

 チビ太さんが、猫たちの上を上手くジャンプし、ダッシュで逃げていった。

「ちょっとっ!!」

 私も逃げようとするが、ガシッと手首をつかまれた。
 全身が恐怖で震える。
 私を捕らえた一松さんは、見たこともない邪悪な笑みを浮かべていた。

「四百万は無いけど、ホテル代くらいなら持ってきてやったから。
 言って聞かせて分からないのなら、身体で教えてやらないとね」

 待て待て。何でそんな怖い台詞がサラリと出る。
 あなた本当に、一ヶ月前までD○だったのか!? 怖いですよっ!!

「俺の機嫌、取りたいんでしょ? 他の奴に色目を使ったお詫びをしたいんでしょ?」

 言葉の後半は、あなたの被害妄想でしょう!!
 仕方ないじゃないですか! 動物って、可愛がってくれる相手になつくものだし!!

「じゃ、行こうか」

 言葉はやわらかいが、奴の手は私の手首を決して離さない。
 むろん、行く方向は松野家ではない。
 一松さんが歩くのに合わせ、猫たちがまた道を開ける。
 てか、この猫は何なんですか。これだけ猫を操れるなら、色々就職の道が
ありそうな気がするんですが!!

「誰かー。誘拐されるぅー」

 助けを求めてはみたが、ンなものが来るはずがなかったのであった。

 …………

 …………

 どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 ど う し て こ う な っ た 。

 今考えているのは、これだけである。

 ベッドに押し倒されている。
 一松さんはシャツのボタンをいくつか外した状態で、気だるげに私を見下ろしている。
 外れかけたネクタイがこちらに落ちてきそう。

「風呂に入らないの?」

「いえですね、ですから、一人でなら入るんですが!!」

「おまえが入らないなら、俺も入らないけど。バスローブは死んでも着たくないし」

 なぜ唐突にバスローブが出てくる。
 だが敵は、嫌なことを思い出したように舌打ちしている。

「いいから、入るよ。ほら起きて」
「わ!」
 手を引っ張られ、身体を起こされる。
 思わず身を硬くすると、息がかかるくらい顔を近づけられた。耳元で、

「ねえ、そう緊張しないでよ。まるで俺が無理やり連れ込んだみたいじゃない」

 無理やりじゃないの? ねえ、違うの!?

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