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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


「根は悪い奴らじゃねえんだが……とにかくツケは払ってほしいぜ、こん畜生」
 と、腕組みをする。そしてポンッと手を叩き。
「ああ、そうだ。兄弟相手にゃ薄情でも、妹なら甘いかもな。
 あんたを人質にして、ツケの全額払いを――」

「それで行きましょう。携帯電話をお持ちですか?」

「はははっ! 冗談に決まってるだろ! オイラは女の子には優しいんだ――へ?」

 私は真顔でチビ太さんを見つめる。

「この際、狂言誘拐もありという気がしてきました。
 今すぐ電話しましょう。上手く行けば、一攫千金ですよ?」

「……妹だ、あいつらの」

 チビ太さんに、ものすごく失礼なことを言われた。

 …………

「えー、夜分に恐れ入ります。松野さんのお宅でしょうか……じゃねえ!
 オイラだ、チビ太だよ!! おい!! 切るんじゃねえよ、ツケの催促じゃねえ!
 いやある意味ツケの催促なんだけど、とにかく切るなっ!!」

 私が黙々とおでんを食べる横で、チビ太さんは電話をかけていた。

「てめえらの妹を預かった! そう、松奈だ!!
 無事に返してほしければ、今までのツケ、百万を――」

「四百万に修正して下さい」

「ええ!? な、何で三百万を上乗せ!?……あ、違う、こっちの話だ、バーロー!
 修正する。四百万を用意しろ!! でねぇと妹の命が――」

「そこはヤ○ザに売り飛ばすとか、×××××に沈めるとか言って下さい。
 その方が、よりエグいので相手の危機感をあおれるかと」

「何でそういうことが平然と言えんだよ!! そっちの方がよっぽどエグいって!!」

 元の世界に戻らなければならない事情の悲しさ。
 困窮とは、こうも人間を変えるものなのか。

「あー……こ、こっちの話でい……そ、その、用意しなければ、その、妹さんを、ええと、う、売り飛ばす……かも……いや、どこって、えと、×××××とか……?」
 後半、ボソボソとしゃべっている。ちゃんと向こうに聞こえてるかなあ。

 しかし誰が電話を取ったんだろう。一瞬で詐欺と判断してガチャ切りしないということは、それなりに私を心配してくれる人が取ったってことだな。

「すぐ来るってよ」

 通話終了ボタンを押し、チビ太さんが言う。

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