第12章 幸村のターン
(氏照って、昨日会って挨拶したばかりだぞ?暴走?つまり兄弟喧嘩でもしたって事か?ま、粛清のおかげで敵の数が減るなら好都合だな)
城内が落ち着かないため今日の仕事は城下の見回りだけを命じられる。
城下の様子は変わらない。
三ツ者に報告を済ませると自分で作った城の見取り図を広げ、直美が居そうな場所と脱出経路を念入りに調べた。
氏照の件については、小田原城下にいる斥候を通して安土にもすぐに報告が届けられていた。
『それと、小田原城に真田幸村が出入りしているとの報告も上がっています』
最後に付け加えられた光秀の一言に、広間にいた皆が首を傾ける。
『あいつ、武田の家臣だったはずだろ?北条についたのか?』
最初に声を出したのは政宗だった。
『理由はわかりませんが上杉と武田は越後にいる様なので単独で動いているかと』
光秀の報告は概ね合っている。
『すぐに目的を探らせろ。武田と上杉の動向からも目を離すな』
信長の指示が飛ぶ。
小田原城が謀反で揺れている今なら出陣もあり得るかもしれないと、武将たちは自ら戦の準備を進めていった。