第28章 佐助のターン
山に吹く風はどことなく冷たく感じるが、それは決して気のせいではない。
佐助と直美が約500年後となる現代から飛ばされてきてすでに4ヶ月が経とうとしていた。
季節は夏から秋へ変わる時期。
世間一般でいう10月になっているのだから山に吹く風を冷たいと思うのは当然の事だった。
『佐助君、ごめんね』
『直美さん?突然どうしたの?』
いきなり謝ってこられても佐助にはさっぱり意味がわからない。
『あのね、私、悪運が強いからまた何か引き寄せたのかもしれないと思って』
『もしかして爆発の事を言っているの?あれはまだ誰が狙われたかわからない。だから直美さんが気にする必要はないよ。それに、俺はいつでも味方だって言った言葉に嘘はないから。ちゃんと直美さんを織田軍の元に連れて行くよ』
『うん、ありがとう』
どことなく元気のない直美の姿に違和感を感じた佐助。
無表情のまま直美の額にそっと手を伸ばして体温を確認する。
『やっぱり。何だかいつもより元気がないと思ったら熱があるみたいだ。推定38.5度といったところだな。ここからは直美さんを背中に背負っていくよ』
熱があっても動けないわけではない。
佐助からの申し出を申し訳なく思ってしまう。