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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第5章 懐疑





「一ノ瀬」


 放課後。職員室の出入り口のそばに立って待っていた翔に、相澤が声をかける。


「待たせたな。こっちだ」
「はい」


 相澤が職員室の近くの階段の所まで促すと、翔もおとなしくそれに続いた。転校初日ということもあり、授業が全て終わったら職員室に来るようにと言いつけてあったのだ。


「今日はどうだった」
「はい、皆とても気さくで優しくて、安心しました。うまくやっていけそうです。ありがとうございます」
「そうか、そりゃ良かった」


 相澤の問いに、心の底から安心した、という風に表情を綻ばせる翔。相澤の胸がちくりと少し痛んだ。これから自分は、この無垢な生徒に少々手酷い質問をしなくてはならない。


「お前、戦い方は誰に教わった」
「え?」


 予想外の質問に、翔は驚いて目を丸くした。その視線が何かから逃げるように少し、ほんの少しだけひらりとさまよう。その僅かな動揺を相澤は見逃さなかった。


「戦い方ですか? ……もしかして今日の対人戦闘の授業、何か問題がありました?」
「問題か。ないな、全く。今日のお前の立ち回りは見事だった。何も問題がない、ということが問題とも言えるな。ある意味では」


 質問の意図が分からない、という風に眉をひそめる翔。だが相澤の視線はひどく落ち着き払っていて揺らがない。


「俺はあまり回りくどい言い方は好きじゃないんだ。だから単刀直入に聞く」


 相澤はゆっくりと腕を組むと、罪状を言い渡すようなはっきりとした声で言った。


「お前、「実戦経験」があるな? それも相当の。でなけりゃまだ高校生になって間もない子どもが、あんな「慣れた」戦い方ができるはずがない」


 翔の顔に明らかな狼狽えの色が浮かんだ。先ほどは出久を意味深な発言で戸惑わせた翔だったが、今は完全に攻められる側に回ってしまった。何とか取り繕うと反論しようとするが、すでに動揺で喉が震えている。


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