第19章 Autumn memory⑤
ポスッ
・・・・・・え?
両耳にかけられる、何か。
次の瞬間、その何かからけたたましい音楽がなり始めた。
(いいっ!?)
ヘッドフォン!?確かに大音量で音楽を放つそれは何かの音楽機だと分かった。
私は見開こうとしたが、それよりも早く、及川さんは私の肩に頭を乗せた。
及川さん・・・?
肩に乗ったその重みは・・・耳が痛いくらい鳴り響く音の中でも理解できるくらい、震えていた。
手も、肩も、全部全部・・・
そして私の膝に感じる、ぽたぽたと滴る雫・・・
(あぁ・・・私、やっと・・・)
やっと彼の"本当"に、触れた気がする・・・。
〜〜〜〜〜!!
大音量で鳴り響く音楽の他に、微かに聞こえる、声にならない声・・・
愛しかった、愛したかった、大好きだった、信じてた、幸せにしたかった、幸せになりたかった、苦しかった、切なかった、辛かった、でも愛してた・・・
及川さんの中の色んな感情が、声や、涙となって溢れ出る。
私に聞かれないようにと付けたヘッドフォンを、ゆっくりと外して・・・私はその"声"を直に聞いた。
そして泣き崩れそうになる彼の体を、羽で触れるくらい優しく抱きしめた・・・
頑張ったね・・・、前に進めたね・・・
「及川さん・・・」
どうか私の彼を想う気持ちが、
少しでも彼の明日に繋がりますように・・・
そう、切に願った。
祈るように・・・彼を守れるように・・・
私は彼の頬に触れ・・・
そっとその涙に濡れた瞳を映す。
「・・・そばにいるよ」
きっと及川さんは、私がいなくたって大勢の人が支えてくれて前に向くことはできる。
だけど、少し立ち止まったり、
休憩したり、甘えたくなった時に、
そっとあなたの背中に寄り添って温もりを与えてあげたい。
もうあなたが、二度と悲しい思いをしなくてもいいように・・・
いつだって私はあなたのそばにいるよ。
だから、その額に、一度だけ・・・
口付けを落とした・・・ーーー