第2章 筆記用具
恋愛を始めると、それに夢中になって学業や友人関係をおろそかにする…なんて話があるが、有はそんなことはなかった。
しっかりもので、計画性に富み、恋愛・友情・勉学をきっちり三立させていた。
そして何かにつけて雑な秋也を、ある時は支え、ある時は先導してくれた。
有は決して目立つ美人ではないが、秋也はことあるごとに有を「キレイだ」と褒めた。
彼女の内面の美しさが外見ににじみ出ているのだ、というのが秋也の意見だった。
それだけ秋也は有のことを尊敬し、愛している。
だからこそ、自分のせいで有がダイエットなんかして、体に負担をかけるようなことは見過ごせなかった。
晩御飯を豆腐サラダだけにするとか言っている目の前の彼女に、秋也は真剣な表情で語りかけた。
「なあ有、本当に、無理して痩せようとする必要ないからな。有が身体を壊したりする方が大変だ。もしかしてオレと付き合ってるってことで、周りのヤツに何か言われているのか?気にするなよ、そんなこと。オレたちにとっては何も問題じゃないだろう」
「秋也くん…」
有は少し考え込むようにうつむいたが、パッと顔を上げ、嬉しそうにニコリと笑った。
「ふふっ、ありがとう!秋也くんにそう言ってもらえると、元気出るなあ」
輝くような彼女の笑顔を見て、秋也もまた顔をほころばせた。
「なあ有、この後メシが終わったら、お前の家に行ってもいいか?」
「え?でももう時間遅いよ。お家の人、いいの?」
秋也は有と違い実家暮らしなのだ。
「いいよ、連絡だけしておけば。子どもじゃないんだから…なあ?」
テーブルの上に置かれている有の手に、秋也がソッと自分の手を重ねた。
有は、自分を見つめる秋也の瞳が熱を帯びているのを感じた。
「…ごめん。この後、友達と飲みに行く約束をしてるの。元々今日は、秋也くんに会えないと思ってたから…」
少し目を伏せて、有は詫びた。
「あ…そ、そうか」
「ごめんね」
「いや、いいさ。気にするな」