第6章 〜本当の正体〜※R18
『高校までは児童養護施設で。大学は咲璃愛の家族から全部払ってもらってました。あの家も、咲璃愛の家が用意してくれたものなんです。』
透「そう、なんですね。辛かったでしょう?」
『はい、当時は。でもそれも透さんに出会うためのものだったのなら、全て許せます。第一、両親がどこにいるのかさえも分からなければ、怒りの矛先をどこに向ければいいのか分かりませんから。』
私が好きな話がある。人は何かを拾うたびに、何かをこぼしていくんです。それをまた拾おうとして、今度は何かを見つける。失くした全てが君と出会う辻褄だったのなら、それだけで私は救われるんです。って、有名な話。私はこの世界に生まれて、命を貰えた。でも愛を貰えなくて、だからまた愛を探して、そしたら透さん、貴方をみつけた。存在しない両親が、貴方と出会える辻褄だったのなら、私は全然辛くない。
『今は透さんがいるから、なにも辛くないです。』
透「僕は居なくなりません。ずっと真恋音さんの傍に居ますよ。約束します。何があっても。貴女の傍にいます。」
『ほんとうにずっと一緒に居れたら良いのに。』
透「僕もそう思います、けど無理な立場なのも重々承知しています。淋しい思いをさせてしまってごめんなさい。」
強く強く抱きしめられた。私も抱きしめ返す。そしてこう言った。
『いつか、が来るまで待ちますから。来なくても、透さんを責めませんから、でも一番近い存在で居てください。それだけで、私の支えになりますから。』
透「待っててください。逃げないで下さいよ?」
『逃げませんよ!』
優しくキスをして。抱きしめながら眠りについた。
チュンチュン────
朝起きて、人間より暖かい体温がある。フカフカの毛。目を覚ます。隣に居たのは透さんじゃなくて、大尉だった。
大「んにゃぁ。」
『たい、い?とおるさんはっ?』
透「僕ならここですよ。真恋音さん、おはようございます。よく眠れました?もうお昼前です。」
『朝じゃなくてお昼なんですね。おはようございます。』
大「んにゃ〜ん。」
透「大尉が寂しがっていたので、一緒に寝かせました。大丈夫でした?」
『目が覚めて、透さんが居なくて寂しかったんですけど、大尉が居てくれたから。』
大尉を膝に乗せて頭を撫でる。私は幸せな朝を迎えた。