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友達のナリカタ【十二大戦】

第1章 まず出会い頭



「どうして?」

彼は悲しそうな眼差しで私を見下した。私の胸に鉈が突き刺さっている。哀愁ゆえにその眼差しなら道理だろう。でもそうではない。何せこの胸に突き刺された凶器は彼の所持品であり突き刺したのもまた彼だからだ。

まず、どこから話せば良いのやら。

私と彼の初顔合わせはとある某国の戦地に設置された簡易キャンプ場であった。私は軍人でも傭兵でもないが訳あって世界各国を渡り歩いておりたまたま紛争地帯に足を踏み入れ彼を見かけたのだった。ウサギの耳の装飾品を着けた変わった子、彼は有名な家系の戦士らしいがキャンプでは彼は孤立していた。

キャンプにいる兵士は皆、彼を忌避していたのだ。

曰く、何を考えているか判らない。曰く、風貌が異様だ目が恐ろしい。総合に気味が悪い。近寄らぬが吉だとか。戦士でもなんでもない私には関係のない話だと高を括った。なのでなんの警戒心もなく近づいたのだ。話すことは嫌いでは無かったからと言う理由もある。情報収集の一環として身に付いた癖のようなものだった。誰とでも隔てなく話す。善人、悪人、中庸関係なく。

「隣いいだろうか?」
「・・・僕ぅ?」

紙コップを乗せたトレーを持って隣に座る。彼はウサギ耳をピョコピョコ動かして首をかしげた。

「君さえ良ければ」
「うん、別にいいよ」

ホラと隣を指差す。そこから彼との交流が始まった。挨拶からの始まりたわいもない会話へ。会話は殆ど私の一方通行だったがした甲斐があり彼は嬉しそうに目を細めると

「ねぇ、君名前なんて言うの」
「私かい?私はと言う。君は?」
「僕?僕は…憂城」
「ウサギ?見た目通りの名前なんだね」

恐らく本名では無いのだろうと察しはつく。彼にも色々事情があるのだろう。私にも事情があるように。私は気にせず話を続ける。何でもない話を続ける。そして最後に彼は私に提案してきたのだ。

「ねぇ、後で僕のお友達になってよ」
「後で?今じゃダメなのかな?」
「うん、後でが良い。皆、眠ったら近くにある大きな木の所に来て必ずだよ?」

念を押すように言い残すと彼はトレー持って何処かへ行ってしまった。私は彼の言葉に従い深夜に彼が指定した場所に赴き鉈で胸を貫かれたのだった。ここで冒頭に至ると言う訳だ。

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