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Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】

第8章 ロー



手術開始数分後。

目の前のグロテスクな光景に
ナツの表情はもう真っ青だった。

「コッフェル」「ペアン」「クーパー」「ヘパリン」

聞きなれない専門用語が飛び交う中、助手を務める彼女達の動きには一切の無駄がない。
ローも相変わらずの表情で眈々と手術を行っている。


もうこれは職場見学という事にしておこう。


手術室の傍らで、絶賛現実逃避中。

しかしそれを遮るように、院長は名指しで指示を出して来やがる。
専門用語は使わずに分かりやすく噛み砕いて出される指示は、恐らく彼なりの気遣いだろう。

でもな。
頼むから私を巻き込んでくれるな。

スルーしようがないように名指しで言ってくるあたり、院長も中々に私の性格を分かってきたじゃないか。


話を受け流すスキルがとんでもなく長けているナツは、手を震わせながらもローに指示された器具を渡していく。
そんなことを繰り返し続けて、どれくらい時間が経っただろうか。

まだ手術が終わる気配はない。

心臓の、手術だ。
時間がかかるのは分からなくもない。

実際に体にメスの入っている患者も、神経を研ぎ澄ましてミリ単位の細やかな施術を行う執刀医も
それはそれは負担が大きいものだろう。

しかし特に何もしてなくても、ナツの疲労も中々に半端なかった。


院長は汗一つ流すことなく、その手を動かしている。
寧ろ私のほうが、冷たい汗という名の発汗が止まらない。


「これ終わったら飯食いに行くぞ。ナツ」

「…え?」


軽い貧血に襲われながらも目の前の光景を直視していると、相変わらずの名指し指名で話しかけられた。


「なんか食いてぇもんあんのか」


目の前で移植を終えた心臓を片手に
戻す位置を微調整している人物の口から飛び出す発言とは思えないほど、普通に世間話をしてくる院長。


いや、確かに手術中は雑談するとか聞いたことがある。
しかしこの場で、それ関係の話題は止めてくれ。


2人分の容赦ない殺気がナツを襲った。


「い、いえ…特に…ないです」


彼女が顔を引きつらせながら何とか発する事ができた言葉がそれだ。

聞いているのか聞いていないのか、ローは相変わらず手を止めることなく手術を行っていた。



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