第4章 始まりの日
「ねぇ、あなたは誰に投票するの?」
「あの方が素敵よね」
「私ずっと前からファンだったのよ」
あちこちでこんな会話が飛び交い、
リングランドの街はそわそわしてる。
それというのも、リングランドで人気投票が実施されることになったから。
この投票で勝ち抜いた5人は更に大きな大会にエントリーする権利があるとか…
「アレクとハルさんも頑張ってくださいね!」
「おー。」
「ブルーベルの宣伝のためにも負けられないな」
お店の休憩中にみんなでそんな話をしたのはついさっきのことだ。
カランコロン…
ドアのベルが鳴る。
「リュカ、いらっしゃい」
「こんにちは、シーナ」
いつものように窓際の席に案内して、紅茶を持っていく。
リュカは今日も綺麗な顔で私に微笑みかけてくれた。
「そういえばリュカも人気投票に出場するの?」
「うーん、俺は別に……」
リュカは苦笑してカップにミルクを注ぐ。
すると、またドアのベルがカランコロンと鳴った。
「サンドイッチとスコーンあるだけ全部と、タルトタタン、ベーコンのキッシュ、アッサムティーで…できればシーナちゃんにサーブしてもらいたいな」
隣の席でいつもの大量注文が通る。
ノエルだ。
パチリとウィンクをこちらに送ってくるので、私も小さく手を振り返した。
「ノエルもいらっしゃい」
「シーナちゃんに会いたくて来ちゃったよー。
…なんだ、リュカ君も来てたの?」
「来ちゃ悪いですか?」
「ぜーんぜん。何なら一緒に食べる?」
「おかまいなく!」
相変わらずの2人に、私は思わず笑ってしまいそうになる。