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【テニプリ・跡部】AfLW 番外編

第1章 happily ever after




ざっ、と音を立てて、心まで揺らすような風が吹いた――南からの生ぬるい温度を持った風は、春の到来を告げる様に音を立て、冬に取り残された枯葉を、乾いた砂をさらって行く。

お陰でボールの軌道は変わってしまったが、彼は難なく自らの動きを修正し、何事も無かったかのように打ち返した。一人遊びのように壁打ちを始めてもう随分と経っていたが、まだまだ終わりそうにもない――それをしている間は、彼女の事を考えて、苛立たずに済むから。




部室では、おなじみのメンバーがだらだらと思い思いの時間を過ごしていた。折角集まったのに、テニスをするでも無く…言い訳をするなら、さっきまではコートに居たのだ。しかし、彼の放つピリピリとしたオーラに耐えかね、先に戻って来た次第だった。


「なー、守河。あいつからの連絡はねーのかよ」


赤髪の少年――向日は、耐えかねて声を上げる。問いかけられた守河 茉奈莉はふるふると首を振り、それきりまた黙り込む。また沈黙が訪れた部室で、誰ともなくため息をついた。

3月ももう終わる。もうすぐ彼らは二年生になる。なのに、ここに居ない彼女からの、連絡はまだ無かった。





「お父さん、お母さん!」
「千花っ…!」
「おかえり、千花!」


空港では、彼女が両親と感動の再会を果たしていた。そう言えば、お迎えは無いの?母に尋ねられた彼女は、気まずげに曖昧に笑う――


「…えっと、所謂サプライズ的な、ね?」


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