第27章 甘くて苦い。
「お邪魔します。」
「はーい」
鉄朗は今日、話したいことがあるらしい。…何の話かは分からないけど、いい話では無さそうだ。
でも、別れ話でも無さそう。…全く予想がつかない。
私は、できるだけ冷静に鉄朗の家のリビングに入ると、何を話されるのかを、黙って待っていた。
「とりあえず、荷物下ろしてそこ座ってくれる?」
鉄朗に言われ、言われたとおり、荷物を下ろしできるだけ背筋を伸ばして座った。
「緊張しすぎな(笑)楽に座れよ」
楽に座る…か。これから大事な話をされるのに、楽に座るなんて私にはできない…。
目の前の鉄朗は、少しだけ笑いながら胡座をかいていた。
「綾菜、話していいか?」
「…うん。」
時計の針の音だけが部屋に響いている。
だけど、私には自分の心拍数まで耳に入ってくる。
鉄朗の顔を除くと、少しだけ悲しそうな顔をしていた。
「俺、卒業したじゃん。」
「うん。」
先程と同じ返事をする。
鉄朗の言う通り、鉄朗は3月が始まって2日後に卒業をした。
私は鉄朗の言葉を待っていると、鉄朗はふぅと息をつき、私の顔を見て言う。
「引越しすることになった。」
「うん。…って、引越しか。大学とかここから通うのは大変そう?」
一瞬、簡単に返事をしてしまったけど、今までとは違く、思わず言い直してしまった。