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【ハイキュー!!】月と影の奏で R18

第9章 有明月


扉の内側で、和奏が泣いている。
こんなチェーンロックなんて引きちぎって、
今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。

泣かないで…なんて言う資格、
今まで散々泣かせてきた僕にあるのだろうか。

「蛍…。蛍は覚えてないかもしれないけど…いつでも隣に居るって…約束したの。小さい頃に。守れなくて、ごめんなさい。」

和奏も…覚えてたんだね。

鮮明にその頃の様子が思い出せる。
「蛍の隣には、いつも和奏がいるんだから、結婚して当たり前でしょ…?」
僕達の当たり前が目の前で終わろうとしている。

「…。王様と本当に付き合うの?」

あんなバレーボールの事しか頭にない奴が、和奏の事大切に出来るはずがない。

「う…ん。影山くん、凄く優しいから…きっと好きになれると思う。」

まだ好きじゃないなら…、
やめときなよ。
僕の方が和奏の事、好きだよ。

そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。
和奏の事、泣かせてばっかりの自分勝手な僕に…そんな事言う資格はない。

王様といる事が和奏の望みなの…?
それで、幸せに…笑顔になれるの…?

「ふーん。和奏と王様ねぇ。僕には上手く行くとは思えないけど…勝手にしたら。上手くいかなくて、泣き言言いたくなったら、聞いてあげてもいいよ。」

幸せになって。
いや…僕の隣以外では笑わないで。

足元から崩れそうになりながら、必死に強がりを吐く。
どうか和奏には、これが強がりだってバレないで。
こんな、カッコ悪い僕には気付かないで。

「じゃあ僕、先に学校行くから。」

本当に崩れ落ちる前に、足早に現実から逃げ出した。
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