第8章 朧月
「ご…ごめんなさい。」
かなりの沈黙の後に、皐月がこっちを真っ直ぐ見つめて言った。
「気持ちは嬉しい。本当に。影山くんが…こんな私の、何が良くて、そこまで言ってくれるのかはわからないけど…でも、こんな気持ちのまま、影山くんとなんて…ちょっと考えられない。」
予想はしてた。
そもそも、皐月と本音で話したのだって、
今日が初めてなのに、
半日やそこらで振り向いて貰えるなんて思ってない。
「皐月の周りを明るい雰囲気に出来るところが好きだ。部活の事も懸命にやってくれてる所も好きだ。たまにドジなところも。好きな奴の為に必死に頑張ってるところも…好きだ。」
だからって、簡単に諦めたら、
また皐月が1人で泣く事になるんだろ?
それならかっこ悪くても、絶対に振り向かせる。
「えっと…。」
流石に強引過ぎたのか、皐月が困惑している。
「月島との事は…このままでいいと思ってるのか?このままで…皐月の気持ちが報われる日が来るのか?」
「それは…」
わざわざ聞かなくても、皐月だってわかってるんだろ?
そんな日、来ないって。
皐月が何か続けそうな雰囲気だったので、次の言葉を待つ。
強引だって事はわかってる。
俺がお前に泣いて欲しくない。
その考え自体が、俺の我儘なんだから。
「報われる日なんて…来ないんだね。。。答えなんて探さなくても、ずっと目の前にあったのに…私が知りたくなくて目を逸らしてただけだね。」
皐月はそんな事望んでないってわかっていたけど、
目の前で泣き出した彼女を思わず抱きしめた。