第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ーーーーもし、もっと早くにローと思いを交わしていたら、また違う結末があったのだろうか
ーーーーもし、あの手紙を見つけずに済んだら、また違う道があったのだろうか
ーーーーもし、二人が死を迎えるまで共に生きると約束すれば、また違う未来にたどり着けたのだろうか
考えても無駄だと分かっているのに、どうしても違う未来を思い描きたくなる。
シュライヤが病室を後にすると、初めてユーリは涙を流した。
静かに声を殺し泣いている彼女を抱きしめるのは、いつも眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔をする彼ではなく、自分自身だけだった。
前編終了
→あとがき