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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第18章 分かれ道




「貴女は素直だし、そしてとても謙虚だから、私が教えたことをきっちりと吸収して、力を発揮出来ると思うの。
ねぇ、エミリ。薬剤師の専門学校に入る気は無い?」

「せ、専門学校!?」


さらに予想外の勧誘に、思わず声を上げる。
薬剤師の専門学校と言えば、王都に創設されている薬剤師を目指す人のための学校である。
一次と二次試験の試験会場にもなっていた場所だ。

薬学だけでなく、医療全般について多くのことを学ぶことができるその学校は、薬剤師を目指す者なら誰もが一度は憧れる学び舎。

しかし、膨大な学費が立ちはだかり、多くは独学で試験に挑む。そんな中でも、本気で薬剤師になりたい者は、借金をしてまで専門学校へ入学するのだ。

もちろん、エミリも何度も憧れた。

そこで勉強したい。もっともっと、たくさんのことを知りたい、学びたい、体験したい。
だけど、兵士を続けている限り、学校に入る時間と金の余裕が無いのである。


そう、このファティマの誘いを受けるということは……同時に兵士の道を諦めなければならないということになる。


「学費のことは心配しなくていいわ。こちらから誘っているのだから、私の方で全て手続きする。貴女には、学費のことなんて気にせず、勉学に励んで欲しい」


人を思う優しい心。それに加え、知識と技術を身につけることができれば、エミリはこの医療界を変えてくれる。
ファティマは、エミリという一人の少女に、そんな大きな希望を抱いていた。

そんな人間を逃す訳にはいかない。
共に行くと頷いてほしい。
何より、これまでも何度か勧誘をしたことはあるが、ファティマの誘いやこんなにも美味しい話を断る者など居なかった。

きっと最後にはこの手を取ってくれるという自信が、ファティマにはある。


「エミリ、どうかしら?」

「……わ、たしは……」


兵士は辞めない。

そう決めたはずなのに大きく心が揺らいでいる。そんな自分の心情に、また動揺していた。

エミリの最初の夢は、薬剤師になることだった。
あの頃の感覚が胸の中に蘇り、今、兵士か薬剤師か、二つの分かれ道を前に立ち尽くしている。


すぐに答えなど、出せるわけがなかった。
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