• テキストサイズ

Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第18章 分かれ道




(……そっか……)


そこで一つ気づいたことがある。


(わたし、やっと今……走り出すことができたんだ)


夢を見つけ、目標に向かうことが始まりではなかった。
薬剤師試験への挑戦、それこそが夢の始まりなのだということ。

戦いに挑む勇気と決意から、手を伸ばしても届かなかった結果に涙し、それに臆せず再び前を向いたその瞬間……それこそが、スタートラインから前へ踏み出したという証なのだ。


「……私、まだ始まったばかりなんですね」

「ええ、そうよ。そして、始まったばかりだからこそ、まだ引き返せる」

「……え」


ファティマから降りかかった、予想外の言葉。エミリの顔から笑みが消え、段々と深刻なものへ変わっていく。

それは、静かに話を聞いていたリヴァイたちも同じである。


「引き返せるって……どういう意味ですか?」

「貴女に薬剤師を目指すなと言っているわけではないわ。その逆よ」


逆とはつまり、薬剤師を目指し続けなさいということになる。しかし、それではどこか腑に落ちない。
もっと違う、別の意味を求めているように感じた。

答えがわからないまま、黙ってファティマの回答を待つ。


「エミリ、兵士を辞めなさい」

「…………っ!?」


突然、突きつけられたそれに、エミリたちは言葉が出なかった。

兵士を辞める。
そんなこと、エミリには考えられなかった。だからこそ、当然の反応。

一体何を言い出すのかと言いたげな顔で、全員がファティマに注目していた。


「……それ、どういう……」

「兵士を辞めて、私と一緒に来なさい」

「え」


また訳の分からないことを言い放つファティマに、冗談でも言っているのかと声を上げたくなるほどに動揺していた。

しかし、彼女の瞳は真剣そのもので、嘘や冗談を言っているようにはとても見えない。

/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp