第11章 部下の憂鬱
秋Side
僕はあまり、人とのコミュニケーションが好きじゃない。
別に、コミュニケーションが苦手な訳じゃない。
普通に友達はいるし、孤立している訳でもない。
ただ単に、嫌いなのだ。
兄は特別モテて、それを盗みみていたからか女の扱いにもなれていた。
おかげで、顔は普通なのに女はすぐによってきていた。
学生時代もそれなりに充実した日々を送っていたし、人間関係で困ることはなかった。
[来るもの拒まず、去るもの追わず]
それが学生時代の僕に一番当てはまることだろう。
そして僕は[人を本気で好きになったことがなかった]。
「あのこは好きかも」
と思ったことは何回かあった。
でも我を失うほど好きと思う人は、
[相手の幸せを願ってまで]好きと思える人はいなかった。
そんな中、兄が家に自分の彼女をつれてきたことがあった。
その頃、まだ俺は、学生で柄にもなく女遊びをこっそりとしていた。
けれど、その生活は彼女と出会ったことで終わる。
「日向由架って言います。」
そう自己紹介されたときは別に、何とも思わなかった。
けれど話していくうちにだんだんと気になるようになっていった。
そして彼女が帰る頃には、[また会いたい]と願うようになっていた。
そして僕は彼女の話を兄から聞いてだんだんと好きになっていった。
でもすでに彼女は兄のモノで、僕はそれを略奪してまで自分の幸せを望まなかった。
そして次会えたのは、自分の就職先だった。
「本日からこの部署でお世話になります、日向由架です。いろいろとご迷惑をかけることもあるかと思いますが、よろしくお願いします。」
神様がくれた二回目のチャンスだと思った。
けれど彼女は僕のことを覚えてはいなかった。