第10章 初デート
休日出勤に退社してからも、幸弥との話し合いをして家に帰る頃には疲れがピークにへと達していた。
「ただいま~。」
私はそういって元気に扉を開ける。
疲れているはずなのにモヤモヤがすべて解決して私の気持ちは軽やかになっていた。
「おかえり。」
いつも通り、出迎えてくれる裕は少し心配そうな表情をしている。
「どうしたの?」
私はそう聞くけど、心配そうな顔してる理由なんてわかってる。
「…ちゃんと、踏ん切りついたか?」
そう聞かれた私は笑顔で言う。
「うん、心配かけてごめんね。」
私が謝ると、彼は私のことを抱き締めた。
「どうしたの?」
私は彼があんなことを言ったのはそこまで気にしてないからだと思っていた。
[俺もそんな状態の由架と出掛けたくなんかない。]
あのとき彼がいった言葉を思い出す。
けれどそれは私の勘違いだった。
「あの時は、あんなこといったけど本当は由架が取られるんじゃないかって心配だった。」
彼の表情は曇る。
「だから、ちゃんと自分の元に帰ってきてくれて嬉しかったんだ。俺は、案外独占欲が強いのかも知れない。」
そういう彼の抱き締める腕はだんだんときつくなっていった。
けれども何故か、それにたいして不快感はない。
それどころか、気分がいい。
それはそれだけ彼のことが好きだと言う証拠と言えるだろう。
「私も自分で思ってる以上に裕のこと好きなのかも知れないな。」
私がそう彼に伝えると、
「じゃあ、俺だけを見ていればいいんじゃないのか?」
と嬉しそうに笑った。