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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第9章 愛及屋烏


和也side


あの日‥

松本家で開かれた晩餐会を最後に、まるで神隠しにでも会ったかのように姿を消してしまった智さんの居所が分かった。

それにしてもまさか屋根裏とは‥考えてもいなかった。

しかも、その屋根裏には”あの男”の部屋を通らないと辿り着けないなんて‥

それも鎖に繋がれて‥

そりゃいくら屋敷中を探しても見つからない筈だ。

でも鍵をどうやって手に入れたらいい?

「何とか手に入れてみせます」

勢いで言ってしまったものの、鍵を持っているのは、あの澤さんだ。

きっと用心には用心を重ねているに違いない。

そう簡単に盗み出せる筈がない。

仮に鍵を手に入れ、智さんを屋根裏から救い出せたとして、その先は‥?

どこか”あの男”の手が及ばない場所に匿う?

一体どこに?

第一、俺と翔坊ちゃんに、果たしてそんな無謀な事が出来るのだろうか‥

駄目だ‥、俺たちだけでは危険すぎる。

ではどうしたら‥


俺は仕事の最中も、澤さんから一切目を離すことなく監視し続けた。

思った通り、澤さんはあの男の部屋の鍵を、常に肌身離さず身に着け、その澤さんから鍵を盗み取るのは、到底不可能だと思われた。

でもそんな澤さんが、唯一鍵をその身から離す瞬間が、一日の内ほんの一瞬だけあることが分かった。

風呂の時間‥
その時だけは、澤さんが鍵を身に着けることはなく、鍵を奪うとしたらそのほんの僅かな時間しかない、そう俺は判断した。


鍵さえ手に入れてしまえば、後は智さんを屋根裏から連れ出すだけ‥


でもそれには、俺達だけじゃない、誰かの協力が必要だった。

俺は散々悩み抜いた末、ある考えを学校から戻ったばかりの翔坊ちゃんに打ち明けた。

すると翔坊ちゃんは暫く考えた後、いそいそと外出の支度を始めた。

「あの‥、お出掛け‥ですか?」


今さっき学校から帰ったばかりで、用意したお茶も冷めてないのに‥

「何をいってるの?善は急げ、って言うでしょ?ほら、和也も早く支度して?」

「は、はい…」

俺は使用人部屋へととってかえすと、余所行きの着物を着込んだ上に外套を羽織った。
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