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ハリー・ポッターと純血の守護者

第5章 【青空の旅】


 期待が膨らむ新学期、9月1日。今年も9と3/4番線は大勢のホグワーツ生徒と、それを見送る家族でたいへんな賑わいだった。あちこちから楽しげな声や人の行き交う足音が交差し、時折それを遮るような汽笛がボーっと鳴り響く。
 しかしそんな賑やかな中にいても、クリスは去年と同じく、最後尾近くのコンパートメントを陣取ってスヤスヤ眠っていた。邪魔者がこないように出入り口を大ガラスのネサラに見張らせているおかげで、安眠を妨害するどころか怖がって近寄ろうとする者すらいない。否、1人だけいた。

「クリス、起きてちょうだい。ねえクリス」
「……ううん…なんだ、ハーマイオニーか」

 寝ぼけ眼でハーマイオニーの姿を確認すると、クリスはググッと伸びをして体を起こした。車窓に目を向けると、眩しい日差しがまぶたの裏を刺激する。

「……今、何時だ?」
「もう10時30分よ。ハリー達の姿が見えないけど、まだ来てないのかしら」
「まだじゃないのか?たしか去年も時間ギリギリだったからな」

 丁度1年前の今日、出発間際に冴えない眼鏡の少年と赤毛でそばかすだらけの少年が、相席を申し込みにこのコンパートメントにやって来たのだった。きっと今年も出発間際に慌てて乗り込んでくるのだろう。

「心配しなくても、時間までには来るさ」
「それなら良いけど。――ところでクリス、あなたもしかしてここまでマルフォイと一緒だった?」
「いいや、今日は一人で来たけど。どうして?」
「そう……ほら、この間マルフォイのお父さん凄く怒っていたじゃない。私達心配したのよ、もしかしたらクリスが酷い目にあってないか、って」
「酷い目って……確かにおじ様は少し厳しい所もあるけど、そこまでする人じゃないよ」

 ハーマイオニーの心配そうな顔に、クリスはつい笑ってしまった。確かにルシウスはあの通り完璧な純血主義で、怒らせるととても怖いが、だからと言って彼女達が考えているほど残忍な人ではない。
少なくともクリスはそう信じていた。

「それより、あの日はハーマイオニーにも悪い事をしたな。散々待たせた挙句あんなことになって」
「いいのよそんな事、気にしないで」

 気取る事なく、ハーマイオニーはそう言ってふんわり笑った。
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