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晴のち雨のちキス【実l況l者/短編集】

第10章 わたしの好きな人/rtrt


「ねぇねぇ、この服どうかなぁ?」

下ろしたての丈が短いワンピースの裾を持って、くるっと回ってみせる

「…ん、あー…まぁええんちゃう?」

「何その適当な感じ。」

眉間に皺を寄せて、軽く抗議してみせると
ソファにだらしなく座り、携帯をいじっているレトさんは面倒くさそうに私を見る

「キヨさんはこんな感じの服、好きかどうか聞いてるのにー!
わかってる?」

「はぁ…わかっとるよ。」

と、気の無い返事をすると再び携帯の画面に視線を落とす

「もう!ぜんっぜん見てないし!聞いてないし!」


レトさんとは大学からの数年来の友人
一ヶ月ほど前レトさんの家に遊びに来ていた時
借りてた物を返しに来たとキヨさんが訪ねて来た

一目惚れって本当にあるんだな
まさに心臓を射抜かれたと言うか、そんな感じで

それからレトさんに色々聞き出そうとするけど
あんまりキヨさんのこと教えてくれなくて

取り敢えずいつ会ってもいいように
レトさんの家に行く時は今日みたいにオシャレして行くようにした

それからかもしれない
レトさんが素っ気なくなった気がするのは


「ねぇ、今日はキヨさん来ないのかなぁ?」

「さぁ…
あ、一昨日来たわ。」

「えー!言ってよー!
あんなに会いたいって言ってるのにー。」

レトさんは普段でも意地悪な時あるけど、こんな時くらい協力してほしいもんだわ

なんて呑気なこと考えていると
不意に視線を感じ、目を向ける

「…っ…ど、うしたの…?」

目が合ったその瞬間、背中に緊張が走る
私を映す瞳は黒く澱んでいて、表情は暗い

怒ってる…と言うよりもっと違う…

「…あのさ、つばさ、
マジでキヨくんのこと好きなん?」

「え…」

唐突で、それでいて真剣な顔付きに、一瞬戸惑ってしまう

「も、もちろん!
でもまだ一回しか会ってないし?
キヨさんに憶えられてるかどうかもわかんないけどね!」

ふうん、と答えるとレトさんはまた携帯をいじりだす

あれ…?なんか変な感じ
さっきのレトさんなんか…?

考えようとしたけど
なんだか頭がごちゃごちゃしてきて

…うん、キヨさんのこと考えよう!

「あ、そーだ!次キヨさんに会った時の練習しとかないと!」

「は?練習?」

「イメトレだよ!
今度はちゃんと会話できるように!
あ、レトさんキヨさんの役やって?」

「はい?」
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