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意のままに

第2章 真実と現実





「申せ。」
信長は片手で碁石を弄びながら答える。

「彼奴らの疑いが晴れた時でいい。私は元々、密偵や暗殺を中心に活動していた。」
その発言に信長の目が見開かれる。
「フフ、私のことを警戒してないわけではないだろう?」
なつは分かっていたとでも言うように笑う。


「まあ、蜜姫から聞いたと思うが私もこの時代の人間ではない。」
「・・・それで?」
「正直言えば、光秀よりも使えると思うぞ?」
「は?」
なついたずらに笑みを湛え、信長を見る。


「疑いが晴れた暁には、信長公専属の忍びとして雇ってほしい。」
「つまり、俺の手足となりたいと?」
「簡単に言ってしまえばそうなる。但し、このことは他の奴らには秘密にしてくれ。」
「何故だ?」
「秀吉は・・・言うまでもないか。私は周りから指図されるのが大嫌いでな。やりたい事をやりたいようにやってきた。」

その言葉に、信長はなつが何を言いたいのかある程度理解した。


要は、女だからとか言われるのが許せないのだ。


「しかし、光秀には話しておいたほうが今後、動きやすいのではないか?」
「私は、今までも1人でやって来た。密偵や暗殺は人が少なければ少ないほどに成功率は上がる。」
「言いたいことは分かるが・・・」
「嫌ならいい。この話は聞かなかったことにしておけ。」


なつ言いながら、碁盤を眺めた。
「フフ、私の勝ちだ。」
「ッ!!」
なつの発言に一手狂わされた。
それが致命傷となったようだ。


「その話、疑いが晴れた時には詳しく聞いてやろう。」
「ああ、その時までは大人しくしているさ。それから、このことは私と信長、貴方だけの秘密だ。ゆめゆめ漏らすなよ。」
なつは碁盤を片付けると、優雅に天守を後にした。


「クク、面白いことになりそうだ。」
信長は脇息に凭れなおすと、残っていた杯を一気に呑み干した。




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