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【イケメン戦国】戦国舞花録

第9章 『狂愛』



「………それでも俺はっ………」

グッと腿の上で拳を握る。
まだ、桜子を許せない自分がいた


「お前がどう思おうが構わんが、俺は小娘を織田のところへやる気は無い。ーーーなんなら俺の正室に迎えてでもここへ無理矢理留まらせる」

その突拍子もない謙信の発言に、
耳を疑った


「は………あ!?」


「あいつは小煩いが退屈せん。普通の女と違って鍛錬も楽しめる。………………少々お前の手垢が付いているが俺が直ぐに清めてやる」


瞬間、
向けられたままの刀の側面を拳で弾き、
幸村は謙信の胸倉を掴み上げた


「幸!?やめろ!」


佐助が止めに入るが微動だにしない。


「………なんだこの手は。あの女はどうでもいいのではなかったのか?」

「……………」

「どうでもいい女を俺がどう扱おうが文句は無い筈だ」

「……あいつの意志と関係なく正室とかここに閉じ込めるとか…………桜子はあんたのものじゃねーんだ」

「だが、お前のものでもないだろう」








…………………………………



「………………」


謙信からダラリと手を離すと

目線を落としたまま、
緩やかな足取りで本丸から出て行った









「…………何がどうでもいい、だ。目の色変えおって」

皺になった襟を正していると、
信玄がクスリと笑った


「わざと煽るとは謙信も悪趣味だな。まぁあの子はお前のお気に入りだからなぁ」

「ほざくな。ただの鍛錬相手だ」

「はいはい、そういう事にしておくよ」



斬り掛かろうとする謙信を抑えつつ、
佐助は桜子の、“昔の男”について思索していた

最近になって現れたその男ーーー
最近………

(…………)












「幸村様」


自室に戻ろうと廊下を進んでいると、
足早に追ってきた佳世から声をかけられる

「私からもお話が」

「……………俺もお前に言いてーことがある」

「まぁ………それは奇遇ですね」



数秒ほど目を合わせると、
幸村は付近にある空き部屋の引手に指をかけた


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