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JOGIOショート

第9章 心の広さはひとりぶん/花京院


木漏れ日のざわめきか、幽波紋の触脚が輝いたのか、夢で、ちらちらと光るものを見た気がする。しかしいつの間にかぼくは昼寝から覚め、不良たちが倒れ伏している校舎裏で意識を取りもどした。
左手にちいさな本が当たる。香港の観光ガイドだ。ケンカをさっさと済ませて、これを読もうと持参したけれど、結局、眠くなってしまったみたいだな。

倒れているのは二人だけだ。もっと大勢いたのだが、ほとんどはぼくに殴りかかるまえに、逃げ去ってしまった。「花京院」自身は手を出していないのに、じぶんたちがまえに進めなくなったり、獲物を取り落としてしまったり、さらには、果敢にも彼に殴りかかったそこの二人が、苦しみだし、倒れてしまったから。



ぼくは本を持っていない右手を開いてみた。

掌のうえに指輪が転がる。緑色の石が嵌め込まれていた。


「きみかい?」
覚えのない指輪を、ぼくの目のまえに現れた法皇の緑に見せてみる。「また、ぼくの意識のないところで、なにかしてきたんだね」


緑色の石が本物の宝石かどうか、見分ける術はぼくにはない。そのへんの落し物か、法皇が盗んできた物かもしれない。しかし、この幽波紋の、美しいエメラルド色の輝きは、そんな疑問を忘れさせるには十分すぎた。この指輪よりも美しい法皇にぼくは微笑む。


「ありがとう。きみが指に嵌めてくれないか」






ぼくは本を携え、左手に指輪を光らせて立ち上がった。
「あのたばこの香りがするな…」

もしくは、女性名の香りだ。彼女は不良が好まないような珍しい銘柄をいつも選んでいるのか、それとも香水かなにかの匂いと混じっているのか、ふしぎな香りをさせているのだ。

「ぼくがたったひとりで呼び出されたからって、応援に来てくれたのかな。まさか、そんな義理はないけれど」



ぼくは、不良のようなナリをしながら、真っ向からケンカをしない、姑息だ、と罵られることもある。逆に、好意を寄せられ、信頼されることもある…指輪なんかをもらってしまうくらいに。しかし、ぼくにとって、ぼくが法皇をすきかどうか、それだけがすべてだ。








  ☆


たぶん、すでにDIOさまに出会ってる肉の芽院です

花京院には味方も敵もいます。しかし実質的には、花京院の世界には彼とハイエロしかいません…というワンシーン
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