第17章 願えるなら私も
別に同学年がいない事に寂しさは無いが、偶然にも、ミオと一緒の介護施設で実習できるのは嬉しかった。
2人で相変わらず他愛のない話をしながら、目的地へ向かう。
電車を降り、秋の陽射しが心地よい農道を歩いていく・・・
「あ、これ外すの忘れてた・・・」
ミオは自身の左手を見てごそごそとし始めた。
左の手首から抜き去ったのは、彼女がいつもつけているオレンジ色のビーズブレスレットだ。
「それさ、いつもつけてるよね」
「はい。小さい頃に、リオが作ってくれたんです」
リオが・・・
「そうなんだ。結構年季入ってんな〜って思ってた」
「ふふ、そうでしょう?今となれば子供っぽいですけど、何だかリオが近くにいてくれてるみたいで、リオが亡くなってからずっと付けてるんです」
取り外したブレスレットを撫でるミオ。
浮かべた柔らかい笑みが、この少女達の絆を表している気がした。
(リオが知ったら、喜ぶだろうな・・・)
きっと今頃、死神の業務に追われている彼女を思い出す。
すると、ミオは笑みを浮かべたまま・・・
「忘れてると思いますけど・・・」
きゅっと、及川の指を握るミオ。
「徹くんが・・・私に初めて話しかけてくれたのは、このブレスレットをつけた時だったんですよ?」
"そのビーズかわいいね!"
"へっ・・・・・・?"
"今度俺にも作ってよ、リオ!"
「あの時、徹くんは私とリオを間違えて私に話しかけたと思うんですけど・・・私、嬉しかったんです」
早く外に出て、徹くんと一緒に遊びたかったから・・・
そのあなたと初めて話した時のどきどきは、今も忘れない。
「そうだっけ・・・ごめん、全然、覚えてない」
「ふふ、そりゃそうですよ。うんと小さい頃ですもん」
けれど、あなたにとっては忘れてしまったあの瞬間が、
あなたを好きになった瞬間だった・・・・・・
「今更だけど、リオに感謝しなくちゃ。あそこで初めて徹くんと話せたんだから・・・」