第14章 それぞれの想い
真夏の体育館で繰り広げる練習試合は、体力面でも、精神面でもくる。
床を滑るたびに汗の川ができ、一点終わる度に雑巾で汗を拭く。
流石に本日の最終セットは体がこたえてきている。
けれど、勝利を手放す気は無かった。
ラリーの中で及川は、ボールを懸命に操る。
ワンプレーも見逃さない、落とさない気持ちでプレーしていた。
レフトの選手が一本目のボールをネット際に弾いた。
及川がカバーに走る。
(どこに上げる?レフトは打つ準備ができているか?ライトは?)
頭をフル回転させて、ボールをトスにしようとしたその時、
ズルリッ
汗で濡れた床で足が滑り、バランスが崩れる。
(やぱ、ここ、拭き残してた・・・)
しかしボールをカバーする事に執着した及川は無理な体制でもボールを繋いでみせた、その直後ーーー・・・
「危ない!!!」
ゴツッ
ボールを返した後、目の前にはネットの支柱。
及川はとっさに体を捩ったが、その支柱に後頭部が鈍い音を立ててぶつかった。
鈍痛と共にぐらりと視界が霞む。
(や・・・ば・・・)
及川さん!!と誰かが叫ぶ声が聞こえる。
遠くに、遠くに・・・
どんどん遠くなっていったーーー・・・