• テキストサイズ

イケメン戦国 家康三成メイン書庫(記念小説等例外有)◆R18

第35章 あんたが望むなら 前編〈徳川家康〉




家康はそう言って襖を開け、その先に広がる夜空を見上げた。
振り返り、の手に、そっと触れる。


「まだ少し、ここに居てあげてもいいよ。……こっち、来て。その方が、星がよく見えるから」

「……はい」


家康に優しく手を引かれて、二人は静かに立ち上がり、縁側へと腰を下ろす。

部屋の中はただただ暗いだけだったのに、外はとても明るかった。
確かに雲も出ているが、月と、無数に瞬く星たちが、とても優しい光を放っている。


はこの乱世へ来て、初めてまともに夜空を見た。


(どうして気付かなかったんだろう……)


この時代、星たちの光を遮るものは何もない。当然、空は驚く程に澄んでいる訳で。


「……星って、こんなに明るかったんですね」

「なに当たり前の事言ってるの。……雲一つ無い夜なんて、明る過ぎて迷惑な位だよ」

「ふふっ。そうなんですね」

「……というか、いい加減、敬語止めたら?」

「え?」

「呼ぶ時も、家康でいい。……いちいち気を遣われると、その方が面倒。」

「……」


は少しだけ考えて、少しだけ頬を染めながら、小さく口を開いた。


「い……家康……」


ただ、名を呼んだだけ。


なのに、その瞬間。
二人の中で、確実に何かが変わった。



/ 373ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp