第2章 始まりの音
『悪い、急に休みが出て人が足りないみたいでバイトが入ったから今日は会えそうにない』
祭り本番当日の昼、そんな電話が彼氏から入った。
電話を切った後思わず大きな溜息が出た。
昨夜から張り切って準備してただけにとても残念な気分だった。
だからと言って事情が事情なだけに何も言えない。
壁に掛けられたこの日の為に買って用意した浴衣。
久しぶりのデートだからと本当に今日と言う日を待ち遠しく思っていた。
「会いたかったなぁ」
彼と知り合ったのは大学に入学してからだった。
一つ年上の彼は学内でも人気がある人で、そんな人から告白された時は本当に夢でもみているのでは?と思った程だ。
それから毎日が幸せ。
だけど、最近は彼が院生になったと言うのもあるけど学校とバイトの両立で忙しいらしく、中々会えなくなった。
学内でも会えなくて最近ではずっとメールのやりとりが主流になっている。
せっかくの祭、こうしてゴロゴロしているのも何だか勿体無い気がするのはまだまだ精神年齢が子供なのかな?なんて思いながら身体を起こした。
折角用意したんだから楽しもう!!